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魚
──別れるひとに── |
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| 私の猫はいつも暗い方をみつめている いつも 後ろ姿 私の描く女は みな眼を閉じている 下を向いて 私のこころは いつも 少し うつむいている 私のワイングラスのふちはいつも溢れそう 風の吹くたび 漣 (さざなみ) が揺れる 冬の晴れた空の色を映して ガラスの底の水藻の中には古い魚が棲む やっぱり眼を閉じて みじろぎもせず そうやって ずっと永い間 ひっそりと そこに 沈んでいるのだ 私が まだ 少女だったころから ──── 水藻は年々生い繁り もはや 魚の姿を すっぽりと包んでしまったが 魚はときおり身をかすかにゆするので グラスのふちから 溢れそうになるのだ 痛い 痛い 沁みるような水滴が ────
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