月 と 魚
──恋しいひとへ──
わたしは 深い夜の海に棲む魚
あなたは お月様


青い ほのかな ひかりをそそぎ
魚は はるか彼方の水上に憧れ


ただ一度 満月の晩だけ
あなたのひかりに 導かれ
魚は 水面(みずも)への旅に出る
なにもかも忘れ 上へ上へ
あなたの近くへ


そして あなたのひかりは
わたしに注ぎ
絡みつき
その 腕(かいな)に抱きあげる


月の光に 魚は はらみ
はらんだ魚を 水面(みずも)に残し
あなたは 天へと かえってゆき

わたしは 再び
かそけき新月の闇へと
ゆっくりと 沈んでゆくのだ


はらんだ 夢の重さに
じっと 眼を閉じ
わたしの棲み家である深海で
孵化を待つのだ



つぎの満月に捧げる
貢ぎもの

 

27歳のとき書いたもの。
少し前には最初の結婚に終止符を打った頃。
新たな 恋の最中にあるけれども 振り返れば この恋の相手は 
自分の恋愛史に残す価値もなかったのだが・・

恋愛は幻想ということをよく思う。

でも、想いそのもの というのは 真実なのだろうと思うのだが。
そのとき相手を見間違っていたとしても。