ガラス玉
まるい ガラス玉はうつくしい
完全で 透明で
しかし それは 世界を
けっして受け付けぬ 傲慢な玉だ
臆病な


砕けた ガラス玉
ぶざまな不定形だ
もはや 透明でもなく
もとにもどらぬ崩れた完璧


しかし まだ もっと
もっと 砕けてしまえ
こなごなに
こなごなに
砂粒のように
いや 砂よりももっと細かく


もはや どんな光も拒まず
どんな力によっても姿を変えられず
どんな形も どんなあやまちをも
拒まぬ そんな粒になるまで

 

22歳のとき書いたもの。
生きていくとともに 自分は かつて自分が思い描いていたような
自分ではいられなくなってゆく。
描いていた自己像を裏切るのは自分。
醜く、あざとく、あさましく卑しい自分。だけど それもまたよし。
そんなこわれた自己像を ひそかに愛しく抱いてゆけるのも また自分ひとり。
そして 美しく疵のない玉は また なにものもを受け付けぬ閉じた世界である。
こわれてしまうなら 半端にこわれるよりも どんなものも受け入れることができるほどの
なにもかもを許せるようになるほどに 傷ついて こわれてしまったほうが
きっと、よい。
少女の頃の自分の いかに 傲慢であったことかを、思い知る。