アメリカ合衆国で昼の十二時のときは、だれも知っているように、フランスでは、日没です。ですから、一分間でフランスへいけさえしたら、日の入りが、ちゃーんと見られるわけです。でも、それには、あいにくフランスが、あんまり遠すぎます。だけれど、あなたのちっぽけな星だったら、すわっているいすを、ほんのちょっとうしろへひくだけで、見たいと思うたびごとに、夕やけの空が見られるわけです。
「ぼく、いつか、日の入りを四十三度も見たっけ」
そして、すこしたって、あなたは、またこうもいいましたね。
「だって… かなしいときって、入り日がすきになるものだろ……」
「一日に四十三度も入り日をながめるなんて、あんたは、ずいぶんかなしかったんだね?」
しかし、王子さまは、なんともいいませんでした。

サン=テグジュペリ「星の王子さま」(内藤濯訳)より